踊る!クライム映画「ベイビー・ドライバー 」レビュー|音楽で加速する天才ドライバーの行き先は?
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ベイビー・ドライバー
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※本ページの情報は2024年10月時点のものです。
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1 あらすじ
音楽を聴くことで天才的なドライビングテクニックを発揮する青年、通称”ベイビー”。彼は犯罪組織のボス”ドク”に借金の返済をするために、組織の逃走車ドライバーとして犯罪に加担する日々を送っていた。ある日、ベイビーはウェイトレスの”デボラ”との出会いをきっかけに、借金の完済と同時に犯罪の世界から足を洗うことを決める。無事借金を完済したベイビーは、デボラを誘ってレストランでデートをしていたが、その場で偶然ドクと再会する。縁は切れたと思い込んでいたベイビーだったが、ドクに脅される形で再び逃し屋の仕事を依頼され、、、。
2 「ベイビー・ドライバー」の監督・主要キャスト
監督|エドガー・ライト
エドガー・ライトはイングランドの映画監督です。20歳にして監督デビューを果たし、監督としての頭角を表すと、2004年に監督した、サイモン・ペッグ主演「ショーン・オブ・ザ・デッド」で一躍その名を世界に知らせました。その後もサイモン・ペッグとタッグした「ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!」や「ワールズ・エンズ酔っぱらいが世界を救う!」もヒットさせます。
彼の作品はコメディ映画が多く、バイオレンスな描写も多々ありますが、それだけではなく、主人公たちの成長譚も描かれている作品が多く、見ていて痛快なものが多いです。
ちなみに、エドガー・ライト監督は、8年間に渡って企画に参加していたMARVEL作品の「アントマン」の監督をする予定でしたが、創造上の見解の相違により「アントマン」の監督を降板してしまいました。個人的にはエドガー・ライト版の「アントマン」がどのような作りになっているのか見てみたかったです。
ベイビー役|アンセル・エルゴート
映画「ベイビー・ドライバー」で主演を務めるのはアメリカ出身の俳優アンセル・エルゴート。父親はVOGUEの写真家、母親は舞台演出家という芸術一家の息子として産まれ、幼い頃から演劇などを学び、2014年公開のSFアクション映画「ダイバージェント」に出演し、注目を浴びます。
「ベイビー・ドライバー」のベイビーという役柄は常に音楽を聴いており、ほとんど喋らないのにも関わらず、アンセル・エルゴートの巧みな表現力によって見事にベイビーという役を演じきっていました。
アンセル・エルゴートは、来月公開のスティーブン・スピルバーグ監督の「ウエスト・サイド・ストーリー」にも出演しているため、そちらも要チェックです。
デボラ役|リリー・ジェームズ
ヒロイン役を務めるのはイギリス出身の女優リリー・ジェームズ。2012年「タイタンの逆襲」にて長編映画デビューを果たすと、2013年にディズニー映画「シンデレラ」のヒロイン、シンデレラ役に大抜擢され、一躍有名となります。
エドガー・ライト監督の作品は以前から好きだったというリリー・ジェームズ。このデボラという役柄はとてもはまり役です。ベイビーとのデートシーンなど普段のキュートな表情からは一変、ロマンティックな雰囲気も出せるリリー・ジェームズに今後も目が離せません。
ドク役|ケヴィン・スペイシー
犯罪組織のボス、ドク役は、アメリカ出身の名優ケヴィン・スペイシー。アカデミー賞を2度も受賞したこともある実力派の俳優で、洋画をよく見る方は一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
筆者は「ユージュアルサスペクツ」での演技が印象的でしたが、「ベイビードライバー」では犯罪組織のボス役として、見かけからワルな雰囲気を纏っています。エドガー・ライト監督は、ケヴィン・スペイシーが出演依頼を快諾した時に興奮していたようで、自分の書いたセリフをケヴィン・スペイシーが口にするのをとても楽しみにしていたようです。
近年はセクハラや性的暴行容疑などで、ハリウッドの窮地に立たされているケヴィン・スペイシー。カメレオン俳優と称される彼の演技を再びスクリーンで見られるのでしょうか?
3「ベイビー・ドライバー」でかかっていた曲は何?
この「ベイビー・ドライバー」という映画は、全米公開時に、カーチェイス版「ララランド」と称されたように、音楽の面でも強烈なインパクトを残しています。
ただただ良いサントラが流れているという訳ではなく、センス抜群の音楽にキャラクターや車の動き、背景の移り変わりまでもがシンクロしており、映画史に新たな風を巻き起こしました。
ちなみに選曲もエドガー・ライト監督自身が行っており、監督としての手腕だけでは収まりきらないそのセンスには開いた口が塞がりません。全曲紹介していると日が暮れてしまうので、ここでは印象的なシーンと使われた曲を紹介していきます!
冒頭 ベイビーが強盗の逃し屋をするシーン
「Bellbottoms」|The Jon Spencer Blues Explosion
監督曰く、脚本執筆前から決めていたというこの曲。映画冒頭に流れているということもあって、「ベイビー・ドライバー」と言えば「Bellbottoms」!くらい印象的な疾走感のある楽曲となっています。
デボラが店で口ずさんでいた曲
「B-A-B-Y」|Carla Thomas
ベイビーとデボラが出会った時にデボラが口ずさんでいた曲。店員のデボラに「教えて、それなんて歌?」と聞き、ベイビーがレコード店で「B-A-B-Y」のレコードを買うのはとても印象的。ちょっと浮かれて踊っちゃうベイビーも可愛いです。
廃車処理場を背にベイビーがipodで流す曲
「Easy」|The Commodores
このCommodoresの「Easy」も印象的な曲です。ベイビーが犯罪組織の仕事から足を洗うと決意したシーンでかかる曲なのですが、他の印象的なシーンでも映画バージョンの「Easy」がかかります。今はすっきりしているんだ、といったような内容の歌詞で、シーンともシンクロしていて監督のこだわりを感じます。
会議室でベイビーとバディが一緒に聴く曲
「Brighton Rock」|Queen
ジョン・ハム演じるバディに「聴くと興奮する一曲はあるか?」と聴かれ、「ブライトンロック」と答えるシーンです。バディと一緒にQueenを片耳イヤホンで聴くのはちょっとほっこりします。いつの時代も共通の趣味の話は盛り上がりますよね。
仮出所したベイビーがデボラと再会するシーン
「Baby Driver」|Simon And Garfunkel
表題の「ベイビー・ドライバー」はこのサイモン&ガーファンクルの「Baby Driver」から取っています。このロマンチックなラストシーンで満を辞しての「Baby Driver」を持ってくるあたり、エドガー・ライト監督のこだわりが感じられます。
他にも様々な80年代〜90年代ソングが劇中で使われているため、気になった方はぜひ「ベイビー・ドライバー」のサウンドトラックを拝聴してみてください!
4「ベイビー・ドライバー」で登場した車
スバル インプレッサ WRX
冒頭6分間のカーチェイスシーンは、音楽と銃撃戦とが見事にマッチした映画史に残る名シーンとなりました。実はそのシーンで使われていた車は、日本の車メーカー、スバルのインプレッサWRXという車種です。
エドガー・ライト監督曰く、実は脚本の段階ではトヨタのカローラを使用する予定でしたが、スタントチームから提案され、スバルのインプレッサWRXに変更したそう。
走行性やパフォーマンスを考えた時に最適だったというスバルインプレッサWRXは、その赤という色味も合間って、劇中で一際目立っていました。ベイビーのドラテクを見ると購買欲がそそられます。
5「ベイビー・ドライバー」のまとめ
映画オタクで音楽オタクのエドガー・ライト監督のセンスが凝縮された映画「ベイビー・ドライバー」。今や音楽と映画は切っても切り離せない関係性ですが、こんなにも音楽と映画の親和性が高いものは今までに見たことがありませんでした。80s〜90sの音楽が全編通してかかっているのもカッコいいし、それをIpodで聴いているベイビーもカッコいい!
もちろんセンスだけの映画ではなく、キャラクターや脚本・設定もクライムものとしてとてもわかりやすく、とても面白いです。個人的にジェイミー・フォックス演じるバッツのサイコ感溢れる演技は、映画全体に緊張感を与えていてとても素晴らしかったなと感じました。
映画全体が踊っているような新感覚のクライム映画「ベイビー・ドライバー」、一度見た方もそうでない方も、この機会にご覧になって見てはいかがでしょうか?