最もフェティッシュでバイオレンス 映画「ドライヴ」レビュー|あらすじ・車種・サソリのジャケットの意味など
今回紹介するのは、ニコラス・ウィンディング・レフン監督の映画「ドライヴ」。暴力的でありながら、色彩コントラストのセンスが抜群なレフン監督の現時点最高傑作との呼び声も高い本作。主演に「ララランド」のライアン・ゴズリング、ヒロインには「プロミシング・ヤングウーマン」のキャリー・マリガンという盤石の布陣で挑み、世界中の映画祭で賞を獲得した。そんな「ドライヴ」を、あらすじや劇中に登場した車の紹介を交えながら、詳しくレビューしていく。
Contents
ドライヴ
監督|ニコラス・ウィンディング・レフン
公開|2011年
上映時間|100分
制作国|アメリカ
配給|フィルム・ディストリクト・クロックワークス
©︎ Drive Film Holdings LLC
1 あらすじ
表向きはカースタントマン、裏では犯罪者たちの逃がし屋家業をする孤高の天才”ドライバー”は、ある日同じアパートに暮らす子連れのアイリーンとエレベーターで乗り合わせ、一目惚れをする。しかし、彼女の夫が服役を終え、刑務所から帰ってきたことをきっかけに、裏社会の犯罪に巻き込まれていくことになり、、、。
2 ドライヴの評価
★★★★★|5/5
3 クラシックなのに唯一無二のセンス
映画「ドライヴ」はストーリーとしては、ドライバーが愛する人を守るために、裏社会の犯罪組織と対峙するという、往年のクライム映画のような題材なのだが、いやいやこれは唯一無二の映画だと声を大にして言いたい。なぜならこの「ドライヴ」は100分の間、常にお洒落な違和感を醸し出しているからだ。
まずライアン・ゴズリング演じる”ドライバー”がほとんど喋らない。寡黙なのに、表情で内なる感情を表現しているので、観客は「なぜドライバーはずっと黙っているのか?」という疑問を抱くことがない。これはライアン・ゴズリングのミステリアスな存在感が大きいなと感じた。
タバコではなく、爪楊枝を口に加える姿がこんなにもお洒落でカッコいいなんてズルい。
美しすぎる徹底的な画作り
本作「ドライヴ」には、ニコラス・ウィンディング・レフン監督の画作りのセンスがふんだんに盛り込まれている。
まず、冒頭の夜のロサンゼルスを舞台にしたカーチェイスシーンから観客を「ドライヴ」の世界の虜にさせる。犯罪者の逃し屋として、警察に追われているとしても、派手に逃げ回るのではなく、車を闇に潜めたり、プロとして洗練された方法で仕事を遂行する。車内からのカメラワークと、”ドライバー”の顔にフォーカスされた映像により、まるで観客が助手席に乗っているような緊迫感を味わえるのだ。この時点でアドレナリン全開である。
細かいところで言えば、タイトルバックのネオンピンクなんかも記憶に残りやすい。レフン監督の美意識には脱帽せざるを得ない。
4 ドライヴに出てきた車
映画「ドライヴ」には様々な車が登場した。用途ごとに車を変えていた”ドライバー”だが、その車種にも製作陣のこだわりが感じられる。
1973年型 シボレー シェベル マリブSS
主人公の”ドライバー”の愛車で使用されたのは、1973年型のシボレー シェベル マリブSS。アイリーンとその息子ベニシオとの憩いのシーンで使われたのが印象的だった。
実はこのシボレーを”ドライバー”の愛車に決めたのは主演のライアン・ゴズリング自身というのも驚きだ。THEアメ車という感じで、ヘッドライトも無骨でカッコいい。
2011年型 フォード マスタング GT
強盗シーンで使われた車は、フォード マスタング GTだ。アメリカンマッスルカーの代表格であり、劇 中の激しいカーチェイスシーンでも、そのパワーを見せつけた。
1969年型 プリムス ロードランナー
自動車整備工場でも働く”ドライバー”が修理している車は、プリムス ロードランナー。価格が高騰していることでも有名だが、手入れを念入りにしなければ走らない車というのが、男のロマンをくすぐる。
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6 極上の名シーン ラブ&バイオレンス(ネタバレあり)
強盗事件によって、アイリーンの夫のスタンダードが殺され、結果的に大金を持ってしまった”ドライバー”は、アイリーンの元を訪れる。強盗によって手に入れた金で、アイリーンとその息子のベニシオと逃げないかと話すと、頬を叩かれる。そのままエレベーターに乗るが、そこには2人の命を狙う殺し屋の男がいるのだった。
さてここからが映画史に残る問題のシーンだ。いや、極上の名シーンとも言えるし、最高に変なシーンとも言えるだろう。
乗り合わせた男が殺し屋だとわかった瞬間に”ドライバー”は、アイリーンを後ろへ下がらせる。とても男らしくその手つきもなんだかセクシーだ。すると照明がだんだんと落ちていって、2人は初めてのキスをする。
辺りが暗くなり、スローモーションでシーンが映し出される。2人だけを照らしていく照明。ここであれ?と不思議に思った人もいるはずだ。普通エレベーターの中は照明など変わるはずがないのだから。少し考えれば変わったシーンなはずなのに、それを自然に見せてくるあたりがこの映画の凄みと言える。
こんなロマンチックなキスシーンは見たことがないなと思っていると、ここで急展開。殺し屋の男の顔を”ドライバー”が鷲掴みにしてエレベーターの壁に打ち付ける。男が倒れ込むとすぐさま”ドライバー”は男の顔を足で踏みつける。それはも何度も何度も、踏んで踏んで踏みつける。このシーンはグロい。フェティッシュだプリミティブだと言っていた、某地面師のように。そして最後は男の顔を踏み潰して殺すのだった。
当然さっきまでキスをしていたアイリーンにとっては目の前で起きている惨状を受け入れられるわけもなく、エレベーターのドアが開くと”ドライバー”の元から後退りしていくのだった。
これはまさに主人公である名も無き”ドライバー”の静かな愛を見せる優しい顔と、人を守るためなら無慈悲で狂気的な殺人マシーンにもなれるという2面性を表した「ドライヴ」らしい名シーンとなった。
7 サソリのジャケットの意味
劇中で印象的だった”ドライバー”が着ているジャケット。ジェケットの背中部分には大きな黄色のサソリの刺繍が施されている。物語中盤にはジャケットのサソリにカメラがフォーカスするシーンや「サソリとカエルの話」があったことなどから重要なメタファーだとわかる。
サソリとカエルの話は有名な寓話だ。
1匹のサソリが川を挟んだ向こう岸に渡ろうとしていた。そこにカエルが現れたので、サソリが刺さないという約束でカエルにおぶって向こう岸まで連れていってもらうことにした。しかしサソリは自分の性を抑えられるず、川の途中でカエルを刺してしまい、サソリはカエルと共に沈んでいくのだった。
結局サソリは自我を抑えることはできなかったというなんとも悲しい話だが、これは”ドライバー”の裏社会でしか生きる選択肢がないことと非常に似ているのだ。
サソリのジャケットを着ているのは、その業を背負っていることの暗示なのだろう。
8 ラストシーンの感想と考察(ネタバレあり)
100分間、絶え間なくニコラス・ウィンディング・レフン監督の美学を感じることができた本作。ラストシーンでは致命傷を負い、死んだかのように見えた”ドライバー”が瞬きをし、車を走らせるところで幕を閉じる。
良い意味でセリフで語ることが少なかった為、今後”ドライバー”がどこに向かっていくのかは観客に委ねている部分が大きいだろう。彼が死んだか死んでいないかも議論に挙がっているようだが、筆者的には”ドライバー”は生きていて、サソリのジャケットの話にもあったように、裏社会と関わりながら地球のどこかにいるはずだ。当然、愛したアイリーンとは2度と交わることはないだろう。
記事では詳しく記載しなかったが、音楽のセンスもニコラス・ウィンディング・レフン監督は抜かりなかった。College & Electric YouthのA Real Heroはメインテーマとして扱われていたが、この曲を聞くたびにあの哀愁漂う”ドライバー”の顔を思い出すだろう。
静かな愛とバイオレンスを感じる映画「ドライヴ」は繰り返し見たい、カルト的な1作品となった。