配信直後から絶賛の『ナイブズ・アウト:ウェイク・アップ・デッドマン』を観た感想

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2025年も残すところあとわずか。

冬の訪れを感じるこの頃、寒さとともに、あの名探偵が帰ってきた。

執拗に長袖を欲しがる名探偵…ではない。ダニエル・クレイグが名探偵ブノワ・ブランを演じる人気シリーズ『ナイブズ・アウト』の最新作『ナイブズ・アウト:ウェイク・アップ・デッドマン』が、12月12日よりNetflixで独占配信を開始した。

前作『ナイブズ・アウト: グラス・オニオン』(2022)からおよそ3年振りとなる本作。ふと振り返ってみると、本シリーズはいずれも寒い時期に観客のもとへ届けられてきた。

外出の機会が減り、屋内で物語と向き合う時間が増える冬。登場人物が多く、会話と推理をじっくり味わうミステリーというジャンルは、やはりこの季節と驚くほど相性が良いのだろう。

そんな相性も後押ししてか、本作『ナイブズ・アウト:ウェイク・アップ・デッドマン』は、配信開始直後からレビューサイトで絶賛の声が相次いでいる。

期待も高まるなか、筆者も視聴したので、ざっくりとした感想を書いていこうと思う。

ナイブズ・アウト:ウェイク・アップ・デッドマン

監督・脚本|ライアン・ジョンソン

主演|ダニエル・クレイグ


配給Netflix
公開|2025年
上映時間|146分

配信サイト配信状況無料期間料金
Netflix見放題なし890円(税込)~

※本ページの情報は2025年12月時点のものです。
最新の配信状況は各配信サイトにてご確認ください。

原点回帰のゴシックミステリー

物語の舞台となるのは、とある田舎町にひっそりと佇む教会。

元ボクサーという異色の経歴を持つ若き司祭ジャド・デュプレンティシー(ジョシュ・オコナー)は、ある暴行問題を起こしたことをきっかけに、この教会へと左遷されてくる。

しかし、彼がそこで目の当たりにしたのは、司祭モンシニョール・ジェファーソン・ウィックス(ジョシュ・ブローリン)の独裁によって支配された、歪んだ信仰の在り方だった。

そんなある日の礼拝中、モンシニョールが刺殺される事件が発生する。

犯行は誰にも不可能に思える密室状況で行われており、第一発見者であったジャドは、たちまち容疑者として疑いの目を向けられてしまう。

地元警察の依頼を受け、事件の捜査に乗り出した名探偵ブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)は、早い段階でジャドの無実を見抜き、彼を協力者として捜査に引き入れる。

容疑は礼拝に居合わせた全員へと向けられるが、不可能殺人の謎は解けぬまま、捜査は平行線を辿っていく。

そんな中、殺されたはずのモンシニョールが“復活する”という、にわかには信じがたい出来事が起こり、事態は一気に混迷を極めていく…というのが大まかなあらすじだ。

前作『グラス・オニオン』の華やかな世界観とは一転し、本作は閉鎖的な田舎町を舞台に、密室殺人という古典的なテーマを扱う。それと同時に、現代における信仰の在り方にも踏み込んだ、硬派なゴシックミステリーとして描かれている。

派手さはほとんどなく、笑いの要素も抑え目だが、その分、登場人物たちの内面が深く掘り下げられているので、人間ドラマとしての完成度は、1作目の『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』にも引きを取らないと感じた。

中でも印象的だったのは、ジョシュ・オコナー演じる若き司祭ジャドだ。物語を牽引する語り部的な役割を担いながらも、自身の葛藤と向き合い続ける地に足の付いたキャラクターとして描かれており、筆者としても好みのキャラクターだった。

元ボクサーのジャドは、試合中に対戦相手を死に至らしめた過去を持つ。聖職者の道を歩み始めてからはその罪と向き合い続け、かつての自分のような人間に愛と赦しを示すことが教会の在り方だという信念を貫いてきた。

そんな彼と対極の位置にいるのが、ジョシュ・ブローリン演じる司祭モンシニョールだ。彼は新たに教会を訪れた人々に対して、あえて不快感を与えるような説教を行い、信徒を遠ざける行為を繰り返している。

しかし、その常軌を逸した振る舞いは、皮肉にも教会に残り続けた少数の信徒たちの結束を強め、モンシニョールへの盲目的な忠誠心を育んでいた。

序盤は、価値観の異なる二人の司祭や信徒たちの紹介に多くの時間が割かれるため、物語の進行自体はややスローテンポに感じられる。それでも、画面全体に漂う不穏な空気と張り詰めた緊張感が持続するため、退屈さを覚えることはない。

そして、礼拝中に起こるモンシニョール刺殺事件を機に、満を持して名探偵ブランが登場する。

前作までは007のボンド役を彷彿とさせるビジュアルだったが、今回は長髪に髭を蓄えた渋い佇まいへと変化し、新鮮さも相まって非常にカッコいい。

無神論者であるブランと、信仰心の厚いジャド。こちらも対照的な価値観を持つ2人だが、事件解決のために協力関係を築き、バディとなっていく過程は、本作屈指の見どころと言っていい。

一方で、やや惜しく感じたのは、事件解決に向けての謎解きパートにおいて、ブランの活躍がこれまでのシリーズに比べて控えめに映ること。

彼の登場までに多くの尺が割かれていることを考えれば致し方ない部分もあるが、名探偵として、さらに主人公たらしめる見せ場がもう少し用意されていれば、より好みの作風になっていたと感じた。

とはいえ、ブランの露出を抑えた分、相棒であるジャドの人物像がより濃密に描かれていたのも事実。その点において、本作は今後の『ナイブズ・アウト』シリーズにおける、新たなスタンダードの到来を予感させる一作となっており、次回作への期待をより一層高めてくれた。

率直に言って、本作はミステリー作品として純粋に面白かった。

謎解きの巧みさはもちろんのこと、重層的な人間ドラマに信仰というテーマを重ね合わせた構成は、これまでのシリーズ以上の深みを感じさせる。さらに、豪華キャスト陣による熱演と確かな存在感が、物語全体の説得力を一段引き上げていたのも間違いない。

それゆえ海外レビューサイトでも軒並み高評価を獲得しており、シリーズのファンにとどまらず、幅広い層に支持される作品となっている。

また、監督のライアン・ジョンソンは第4作についても種となるアイデアを持っているとのことで、シリーズが今後さらにどんな進化を遂げていくのか、期待せずにはいられない。

※本記事で使用している画像は、すべて公式サイトおよび公式の配信動画より引用しています。著作権は各権利者に帰属します。

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