【感想&考察】LAZARUS ラザロ 第10話でハプナ事件の深い闇が見える|リーランドの過去とアクセルの謎

公開日|2025年6月13日

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第9話の記事はこちら↑から読めます

*ネタバレが含まれております

物語はいよいよクライマックス目前。

第10話のサブタイトルは『I Can’t Tell You Why』で、これはアメリカのロックバンド「イーグルス」の同名曲が由来となっています。

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第3話の『LIFE IN THE FAST LANE』以来、再びイーグルスの楽曲名を使用しているあたり、渡部監督の彼らへの深い愛情が伝わってきます。

メロウな雰囲気が漂う素晴らしいバラードソングで、筆者もどハマりしていた時期もあったため、サブタイを見た時思わず嬉しくなりました。

日本語タイトルは『言いだせなくて』となっており、まさにリーランドがスパイ活動の件を、ラザロメンバーになかなか言えなかった内容とリンクしていることが分かります。

音楽の知識は、もちろん渡辺監督の足元どころか影すら踏めないレベルですが、監督の選曲を見ると、ついつい「わかってるなぁ〜!!」と言いたくなってしまうんですよね(笑)。

LAZARUS ラザロ

原作・監督|渡辺信一郎
アクション監修|チャド・スタエルスキ(87Eleven Action Design)
キャラクターデザイン|林明美


制作|MAPPA
放送|2025年4月〜
話数|全13話

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貴族だったリーランド

前回でスパイ疑惑は晴れたものの、まだ何か隠していそうなリーランドでしたが、今回は彼の過去がメインで語られることになりました。

クリスが見つけた薬(血液が固まるのを防ぐ効果)の鑑定結果から、スキナーが人工心臓の手術を特権階級向けの病院で受けた可能性があると判り、何か思い当たる節があったリーランドが、アクセルとダグを実家に連れて行くことに。

そこは庶民が想像もつかないほど豪華なお屋敷で、その実リーランドは、何十代も続く貴族の末裔・アスター家の人間でした。

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正直これまでの話から、リーランドの家柄が良い描写などあったのか?と思いましたが、女装をした際に、所作があまりにもきめ細やかだったことが、お金持ちの息子の伏線になっていたようです。

相変わらずラザロは、キャラ造形のディテールが細かいなと思いました。なので、完結した後に見返したら、キャラにまつわる伏線描写がまだまだ見つかるかもしれません。

そんな中で、4年ぶりに帰郷したというリーランドは、姉のイザベラと再会を果たし、医療ソサエティの情報を聞き出そうとします。

財産の問題などで苦労をしてきた姉と、外で好き放題やっていた弟の間で一悶着ありましたが、それでも家族思いのイザベラは、週末を一緒に過ごしてくれるならという条件付きで、リーランドに病院の情報を渡すことに。

姉のおかげで、無事リーランドたちは医療機関へ辿り着き、スキナーが人工心臓の手術を受けた事実と、彼の人工心臓をリアルタイムで監視している人間を探し出せる可能性を、医者から教えてもらうことができました。

本来であれば、患者のカルテ、ましてや特権階級の人間の情報など、病院が漏洩することは御法度ですが、今回のお話の中では、ハプナの影響で発熱を訴える患者が増加していたりと、明確に人類の終わりが見え始めたので、今さら隠てもという気持ちが働いたのかもしれません。

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それはリーランドの姉であるイザベラも同じ気持ちで、どうせ世界が終わるなら、最後くらいは家族と過ごしたいと思っていた様子でした。

こうして3人が持ち帰ったファームウェアを分析した結果、スキナーの人工心臓をモニタリングしていた人物は、ハプナの偽特効薬の発表の際にハッキング攻撃をしてきた、ポップコーンウィザードだと判明。

彼女が登場した回で、エレイナに再会をほのめかすような発言をしていたことからも、重要人物だとは思っていましたが、次週は最強ハッカー同士の対決が見れるのでしょうか。

しかし、なぜポップコーンはスキナーに協力しているのかはまだ謎で、面識があるのかどうかも今のところわかりません。

スキナーは特効薬を持っていると言っていたのに、偽特効薬の発表会にわざわざ潜り込んだ目的も不明瞭です。

単純にそれがスキナーの計画に反するからなのか、それとも敵対組織が特効薬を悪用することを考慮したのか、様々な可能性があるので、ポップコーンとの関係性も見どころですね。


空港事故とハプナプロトタイプの謎

今回は、以前クリスが巻き込まれたと言っていた、スキポール空港の事故について触れられました。

リークされた監視カメラ映像には、荷物を待つスキナーが映っており、隣の少年にファンサービスをしたりと、ハプナ事件の声明とはまるで違い柔和な表情をしています。

そんなスキナーが空港にいた理由は、ハプナのプロトタイプを持ち出し、そのリークをする為とのことで、そもそもハプナの計画が別の組織によって計画されていたことが示唆されました。

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考えられるのは、アクセルを執拗に追い続ける陸軍情報部ですが、開発者のスキナーがリークしようとするのは、その計画自体が人類の命を減らすような非人道的なものだったという可能性があります。

実際、米軍にとってリークをされるのは不都合なようで、在欧米軍がテロリストの確保という名目で空港にやって来ます。

情報の錯綜によって空港警察とも鉢合わせし、スキナーを挟んだ状態で銃撃戦が始まってしまいますが、この時、スキナーの持つ致死性の高いと言われていたハプナのプロトタイプが流出し、その場にいた多くの人が犠牲となったようです。

てっきりプロトタイプも薬の類だと思っていましたが、映像を見る限りは有毒なガスのようにも見えるんですよね。

今ではハプナは鎮痛剤として世界中に広まっていますが、プロトタイプは軍事目的で使用する兵器だったのかもしれません。

そんな多くの犠牲者を出したスキナーは、その場で陸軍情報部に拘束されてしまい、3ヶ月後にハーシュたちがいる研究所に戻ってきた時には、心を閉ざし、別人のような姿になっていたという話でした。

陸軍情報部との間で何らかのやり取りがあったのは確実ですが、そもそも何故スキナーは空港にいたのに、クリスのように心停止せずに生きていられたのかは疑問です。

もしかしたら、それが人工心臓の手術の話に繋がってくるのかもしれませんが、手術の時期も明確ではないので、スキナー本人の謎も深まってきました。


ラザロメンバーのピンチ

エレイナとダグは、ポップコーンウィザードを追う為、パキスタンへと向かうことになりましたが、道中でエレイナは自身の体温が上昇している様子がありました。

ハプナによる人体の影響が出始めたことで、もう物語がクライマックスに近づいていることに気付かされます。

さらにアクセルが刑務所にいた頃、囚人を対象にハプナのプロトタイプを使った人体実験が行われ、その生存者はアクセルのみだと明かされました。

実験の存在を唯一知っている刑務所の医者も行方がわからないので、アクセルが保護に向かうことになりましたが、そこで待ち構えていたのは殺し屋の双竜。

前回でありったけの暗殺スキルを見せつけた双竜ですが、パルクール主体のアクセルと直接対決となると、どんな戦闘描写になるのか気になります。

空港事故や人工心臓の謎、刑務所での人体実験など、膨大な情報が詰め込めこまれた第10話となりましたが、これまでの伏線が全て回収されるのか、ラスト3話がより楽しみになりました。


渡辺作品のファン必読の2冊

洗練された唯一無二のアニメーションで、国内外に多くの熱狂的なファンを獲得し続けている渡辺信一郎監督ですが、その半生の振り返りや濃密なインタビューが載ったファン必読の2冊が発売されるということで、気になった方はそちらも是非チェックしてみてください。

※ちなみに筆者は、先日発売された「別冊ele-king 渡辺信一郎のめくるめく世界 (ele-king books)」を読破しましたが、渡辺作品のファンなら堪らない、音楽についての濃密な話も掲載されていて、かなり読み応えがあり楽しめました。

別冊ele-king 渡辺信一郎のめくるめく世界 (ele-king books)

渡辺信一郎の世界 『カウボーイビバップ』から『LAZARUS ラザロ』まで (KADOKAWA)