【感想&考察】LAZARUS ラザロ 第12話でスキナーの居場所が判明|謎のウェントン計画とアクセルの過去

公開日|2025年6月26日

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第11話の記事はこちら↑から読めます

*ネタバレが含まれております

ついに物語は残すところあと1話となり、クライマックスを迎えた本作。

第12話のサブタイトルは『CLOSE TO THE EDGE』ということで、こちらはプログレバンド「イエス」の大名盤に由来しています。

© Atlantic Recording Corporation

収録時間37分47秒の中で、楽曲数はわずか3曲という大作志向が際立ったアルバム。

特に1曲目の表題曲でもある『Close to the Edge』は、4つのセクションから成る全長18分の大作で、緻密な曲構成、巧みな演奏技術、さらに圧倒的な表現力によって、リスナーを飽きさせることなく最後まで魅了します。

「プログレッシブ・ロックの金字塔」と称されるのも納得の名盤です。

また『Close to the Edge』の邦題「危機」は、本作の世界における人類滅亡の危機、アクセルたちの生命の危機、そして敵対する陸軍情報部の危機を象徴しており、物語と見事に呼応しています。

アニメファンにとっては物語を追うことがもちろんの楽しみですが、音楽ファンにとっても、毎話のサブタイトルに込められた渡辺監督のセンスには唸らされているはず。

ちなみに、先日発売された「別冊ele-king 渡辺信一郎のめくるめく世界」に掲載された監督インタビューや、生涯ベスト100アルバムを読むと、より音楽を聴きたいという欲求と知的好奇心が同時に刺激されるので、まだ読んでいない音楽ファン、渡辺作品のファンの方はこの機会に是非。

LAZARUS ラザロ

原作・監督|渡辺信一郎
アクション監修|チャド・スタエルスキ(87Eleven Action Design)
キャラクターデザイン|林明美


制作|MAPPA
放送|2025年4月〜
話数|全13話

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エレイナの復活とスキナーの居場所

前回、なんとかポップコーン・ウィザードのもとへ辿り着くことが出来たエレイナ。

ハプナによる高熱で1度は倒れてしまいましたが、ポップコーンの看病のおかげで目を覚まします。

かつてのハッカー対決の際に、互いにシンパシーを感じた様子もありましたが、エレイナは彼女に出会えた事を心から喜んでいる様子。

©2024 The Cartoon Network, Inc. All Rights Reserved

ポップコーンも、リンという自身の本名を明かすなど、初対面とは思えないほど打ち解けた様子を見せていました。

2人は「SEX PISTOLS」という共通の趣味だけではなく、ハッカーとしての実力を認め合い、また生い立ちや人柄にも共鳴する部分があるのかもしれません。

そして本題である、ポップコーンがスキナーに協力をする理由も語られました。

実は彼女はスキナーの親族なのではと疑ったりもしましたが、実際には無痛症を持つモルディブ辺りの生まれで、スキナーが住民の為に島を買ったことで救われた内の1人だと明かされました。

ラザロが無痛症の人々の調査をした際も、住民がスキナーに対して感謝している様子が描かれていたので、ポップコーンも彼に対して大きな恩を感じていたのでしょう。

さらに、ポップコーンの居場所を突き止めた人物には、スキナーの居場所を教えてもよいと本人から言われていたとのことで、今回ついにスキナーの所在地が判明しました。

場所は、なんとラザロのアジトのすぐ近くのホームレス地区。

まさに“灯台下暗し”といったところでしょう(笑)。

第3話でアクセルとダグが出向いた際に、チラッと映っていたスキナー似の盲目の男性が本人ということなのでしょうか。

もしあの時ダグが彼を疑っていれば、こんなに苦労することにはならなかった気がしますが、そんな世界線は物語としてまず面白くないですよね(笑)。

チームラザロとスキナーが出会うことでどんな会話が繰り広げられるのか非常に気になるのと同時に、ハーシュとの関係についても最終話で語られることになるのでしょうか。

また、エレイナとポップコーンの会話から、エレイナもかつて事故に巻き込まれ、死にかけたことが明かされます。

ハプナのプロトタイプが流出し、クリスも巻き込まれたとされる空港の事故や、リーランドやダグが過去に遭遇した事故など、ラザロの創設に「死の淵から復活した人間」という条件が織り込まれていたのでしょうか。

そうなると創設者のアベルが怪しい…といった考察がどんどん膨らんできますね(笑)。

また終盤、リーランドがスキナーを探す目印を悩んでいたシーンでは、第3話で登場した珍しいチューリップの花が伏線となっている可能性があります。

意味深に描写されたにも関わらず、その後触れられていないので、最終話での回収に期待です。


アクセルへのキス

双竜との戦闘により致命傷を負ってしまったアクセル。

腹部を銛で貫かれてしまったので、絶対に助からないだろうと思っていましたが、天才外科医の手により何とか一命を取り留めました。

そんな彼を助けてくれたクリスとの会話の中で、今まで語られてこなかったアクセルの過去が明らかに。

彼は家族も親戚もおらず、幼い頃からギャングのような活動で生きてきたこと。その中で、仲間をすべて失い、以後は流れ者として孤独に生きていたことが明かされました。

ホームレス地区のリーダーだったジルが「いつの間にかスッと消える」と言っていたのも、そうした背景があるからなのでしょう。

そんなアクセルも、ラザロを自分の居場所と思い始めていたシーンは、胸を打たれるものがありました。

前々から思っていましたが、ラザロメンバーはとにかく性格が良い気がします。

全員個性は強いものの、チームとして行動する際は軋轢を生まないように気を配っていますし、仲間がピンチになったらすぐさま駆けつけるので、信頼に足る人物像になっているんですよね。

特にクリスはその恩恵を強く受けた1人。

ロシアの組織に拘束されていた際、アクセルが「今のお前を助けに来たんだ」と告げた場面は、クリスの過去や現在の姿を肯定する一言であり、素性を変えて生活をしていた彼女にとって1番欲しかった言葉なのではないでしょうか。

そんなクリスは、もしかしたら人類が滅亡してしまい、アクセルと会うのがこれで最後かもしれないと病室で彼にキスをしていました。

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ラザロが結成されてからたかだか1ヶ月、されど濃密な1ヶ月という、彼らの人間関係が良い意味で変わっていく様子は印象的。

願わくばもっと仲間でワチャワチャしながら事件を解決するシーンを見てみたいですね。


双竜とウェントン計画

前回のお話で双竜が、過去に得体の知れない場所で、暗殺者としてのスキルを教え込まれていたような描写がありましたが、今回はその出来事がハプナ事件に絡む可能性が示唆されました。

それは「ウェントン計画」というもので、どうやらごく一部の者しか知らない計画のようです。

双竜はおそらくその「ウェントン計画」に参加させられていた人物ということになる気がしますが、彼が昔の出来事を思い出して苦しんでいる様子から、自ら志願して暗殺者になった訳ではなさそう。

双竜と、彼の代理人であるHQが同一人物であり、解離性同一性障害という精神疾患によって人格がたびたび入れ替わっていることも、この計画と深く関わってきそうです。

さらに気になったのは、ラザロの創設者であるアベルが彼の存在を熟知していたような素振りを見せ、彼のことをこの事件の鍵を握る存在とまで言っていたこと。

あらかじめ共生人間学を専攻していたリズに対して、双竜を探す任務を与えていたことからも、その計画による影響で解離性同一性障害になることを知っていた可能性も考えられます。

現時点では、双竜とハプナ事件との繋がりはまだ見えていませんが、最終話でその全貌が明らかになるのが楽しみです。


NSA vs 陸軍情報部

ハプナによる違法な人体実験の真相を隠そうとする陸軍情報部。しかし、ラザロの妨害を続けるシュナイダーは、どうやら独断で行動していることが明らかに。

人類滅亡が迫る中で、組織の闇を隠そうする行動しかしないのは、彼らが既に特効薬を飲んでいるからだと思っていましたが、ただ単純に利己的な人間の象徴として描かれているようにも思えます。

そんなシュナイダーは機密が漏れる可能性を考慮してハーシュを拘束し続けていましたが、それに痺れを切らしたアベルが、特別に大統領令を発令してもらい、陸軍情報部内の捜索に踏み切ることに。

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彼の表情から、陸軍情報部に対しての相当な怒りを感じましたが、最終話ではNSAと陸軍情報部の直接対決が描かれることになりそうです。

しかし、これほど正義感に燃えるアベルが、裏で陰謀を企てていたとは考えづらく、彼の真の目的や、スキナーおよびハーシュとの関係性も気になるところ。

ラザロメンバーの過去が明かされた今、アベルの素性だけではなく、スキナーとハーシュの関係も非常に気になり始め、最終話への布石として見応えのある第12話でした。


渡辺作品のファン必読の2冊

洗練された唯一無二のアニメーションで、国内外に多くの熱狂的なファンを獲得し続けている渡辺信一郎監督ですが、その半生の振り返りや濃密なインタビューが載ったファン必読の2冊が発売されるということで、気になった方はそちらも是非チェックしてみてください。

※ちなみに筆者は、先日発売された「別冊ele-king 渡辺信一郎のめくるめく世界 (ele-king books)」を読破しましたが、渡辺作品のファンなら堪らない、音楽についての濃密な話も掲載されていて、かなり読み応えがあり楽しめました。

渡辺信一郎の世界 『カウボーイビバップ』から『LAZARUS ラザロ』まで (KADOKAWA)

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