【感想&考察】LAZARUS ラザロ 第7話は物語の核心に迫る伏線回|無痛症とハプナとアクセルの謎

公開日|2025年5月23日

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第6話の記事はこちら↑から読めます

*ネタバレが含まれております

意外にも賛否が分かれている本作ですが、否定的な意見の多くは「ストーリーがなかなか進まない」というものでした。

確かにその意見が出るのも分かります。2010年代頃のオリジナルアニメの大半が、物語の中盤くらいまで溜めの回だったのに対し、最近のヒット作品は、1話から”タイパ”(タイムパフォーマンス)を意識した展開が主流になってきた印象を受けます。

とはいえ、本作には急展開こそ少ないものの、アクションの完成度は歴代でも屈指のレベル。加えて、各話に丁寧に張り巡らされた伏線も魅力で、それらを考察する楽しみがあるなど、じっくり味わうタイプの作品だと言えます。

そんな“積み上げ型”の構成を踏まえたうえで迎えた第7話は、まさに物語が大きく動き出す“転機”とも言える伏線回となっていました。

サブタイトルは『Almost Blue』。

© 1982 F-Beat Records Ltd.

こちらはエルヴィス・コステロ&ジ・アトラクションズの楽曲です。

タイトルの通り、心の中が憂鬱でもの淋しい気持ちで埋まっていき、でも大粒の涙までは出ないという、ひたすらにブルーな音楽ですが、その美しいメロディーにはうっとりさせられてしまいます。

実際に7話の中では、クリスがそんな気持ちになっていたような気がしました。

LAZARUS ラザロ

原作・監督|渡辺信一郎
アクション監修|チャド・スタエルスキ(87Eleven Action Design)
キャラクターデザイン|林明美


制作|MAPPA
放送|2025年4月〜
話数|全13話

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スキナー博士と終末世界

冒頭の和やかなBBQシーンに反して、世界は静かに、しかし確実に崩壊への道を辿っています。

北極海の海氷が消滅したことにより、地球温暖化の加速と、国家間での資源争いが起きる可能性が浮上しました。

ハプナによる影響が出る以前に、人類が互いに命を削り合う未来を迎えることは、彼らを「目先の利益に囚われる」と形容したスキナーにとって、分かりきっていた事態かもしれません。

©2024 The Cartoon Network, Inc. All Rights Reserved

そんな中、スキナーの行方を追い続けてきたラザロのメンバーたちは、AI教祖ナーガのメモリから抽出された文字列を解析し、それが4つの沈んだ島を指していることを突き止めます。

その島々の中には、モルディブやツバルといった、現実世界でも海面上昇により沈没の危機に瀕している国々が含まれていました。

エレイナ以外の4人が現地調査をすることになり、今回は彼女の出番があまり無いのかなと思ったら、バカンス気分を味わおうと、ありもので1人パーティをやり始めたのは可愛すぎましたね。

今回、年齢の話も出ましたが、エレイナはラザロの中でも最年少だと判明したので、今後は末っ子気質が押し出されいくのかもしれません(笑)。

そんなエレイナを残し、沈んだ島の探索の最中に彼らが目にしたのは、人の暮らしの痕跡が残る廃墟や、ビルの谷間をボートが進む光景など、まさにディストピアそのもの。

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ただ、その残酷さを目の当たりにしながらも、人がいない場所の空や海は美しい青色で、まるでスキナーから「地球に人類は必要なのか?」と問われているような気分になりました。

実際、クリスは現在の惨状を目の当たりにしながら、かつて人類が地球を破壊してきた事実を認識し、静かに涙を流していました。

スキナーは、自分が見た景色を他人に追体験させることで、地球と人類の未来に対する選択肢を突きつけているのかもしれません。

ちなみにこの探索シーンで流れていた音楽は、カマシ・ワシントンの「Sageness」。

渡辺監督によれば、この沈んだ島の描写のためだけに作られた楽曲とのことで、メロディや構成が壮大でありながら、どこか切なさも感じる素晴らしい楽曲になっていました。


ハプナの秘密

沈んだ島を探索する中で、アクセルが地元ガイドの顔にある怪我へ違和感を覚えたことから、物語は大きく動き始めます。

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その男は「痛みを感じない」無痛症であり、さらに島の住民の多くも同じ症状を持っていることが判明しました。

つまり、彼らはそもそも痛みを感じないため、鎮痛剤ハプナを服用する必要がない人々。混沌とした社会からは隔絶された、異質な存在です。

そしてさらに驚くべき事実として、島が沈む以前にスキナーがこの4つの島をすでに購入していたこと、そして住民たちの遺伝子を提供させていたことも明らかになりました。

これにより、彼らの遺伝情報がハプナの開発に使われた可能性は、ほぼ確実だと言えるでしょう。

加えて、ハプナの開発に関わった研究者の中に、ラザロのメンバーであるハーシュの名前もあったことが判明。スキナーと彼女の間に、親密な関係があったことも示唆されました。

これまでにもハーシュはハプナに関して異常なほど詳しく、ダグも不審に思っていたのに、なぜラザロのメンバーたちは、彼女の素性に疑問を抱かなかったのか不思議なところですが…。

ただ、ハーシュは指揮官という信頼を置かれていた立場でもあるので、次回は自らの口からスキナーとの関係が語られることになるかもしれません。


救世主はアクセル

今回は、陸軍の情報部がアクセルの行方を追っている情報も明らかになりました。

不死身が約束された、「天使の羽根」の形をしたペンダントや、ハプナを飲んでも効果が無い体質など、作中でも多くの謎があるアクセルですが、今後は彼の過去が大きく関わってきそうです。

今回、無痛症の話が出てきた際、彼の人間離れした運動神経は、痛みを感じないことによるものかと思いましたが、アクセルの驚いた表情を見せていたことから、今の所の繋がりは見えてきません。

ただ、1話でハーシュが彼の病歴を知っていたという発言を踏まえると、アクセルの体質には、世界をひっくり返すほどのパワーを持っている可能性は高く、それが理由で陸軍が追いかけているとも思えます。

ラストではクリスが謎の女性に「アレクサンドラ」と声をかけられる場面も描かれました。

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ロシア系の名前であるアレクサンドラと、クリスティンという現在の名前がどう繋がってくるのか、彼女の顔が強張っていたことから、何かしら過去に因縁がある可能性があります。

彼女自身、これまでにもスパイのような含みを持つ発言をしていたため、実は本名がアレクサンドラという可能性も否定できません。

徐々に明らかになってきたハプナ事件の真相と、ラザロメンバーたちの知られざる過去。

いよいよ物語の核心が見え始めてきたので、ますます楽しみになりました。


渡辺作品のファン必読の2冊

洗練された唯一無二のアニメーションで、国内外に多くの熱狂的なファンを獲得し続けている渡辺信一郎監督ですが、その半生の振り返りや濃密なインタビューが載ったファン必読の2冊が発売されるということで、気になった方はそちらも是非チェックしてみてください。

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渡辺信一郎の世界 『カウボーイビバップ』から『LAZARUS ラザロ』まで (KADOKAWA)