タランティーノ最高傑作?「ワンスアポンアタイムインハリウッド」レビュー|ヒッピー文化根付く60年代ハリウッドにタイムスリップ

公開日|2022年3月26日 

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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

監督|クエンティン・ラタンティーノ

公開|2019年

上映時間|161分

製作国|アメリカ・イギリス

https://www.sonypictures.com/movies/onceuponatimeinhollywood

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1 あらすじ

1969年ロサンゼルス。落ち目のTV俳優リック・ダルトンは、ハリウッドで映画俳優として再び返り咲こうともがく日々を送っていた。リックとは対照的な性格のスタントマン兼付き人のクリフ・ブースとは相棒として良い関係を築いていた。そんな中、リックの隣家に引っ越してきたのは時代の寵児ロマン・ポランスキー監督と新進の若手女優シャロン・テート夫妻だった。ハリウッドの著しい変化の中、スポットライトの当たる彼らを横目にリックは、再起を図りマカロニウエスタン映画に出演することに決める。そして1969年8月9日、映画史を震撼させる事件が起きる。


2 ワンスアポンアタイムインハリウッドのキャスト・監督

監督|クエンティン・タランティーノ

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クエンティン・タランティーノはアメリカ出身の映画監督です。映画監督・脚本家としてのデビュー作となった「レザボア・ドッグス」がヒットすると、次作である「パルプ・フィクション」がカンヌ国際映画祭のパルムドールに輝き、監督として、そして脚本家としても知名度を上げます。

タランティーノ監督は、ビデオショップ店員として働いていた時代に数多の映画の知識を蓄えたことが自身の映画作りに色濃く反映されており、生粋の映画オタクの顔も合わせ持っています。日本映画も好きだと公言するタランティーノ監督は、北野武監督の「ソナチネ」や押井守監督のアニメ「Ghost in the shell」などを絶賛しており、傾倒するジャンルの幅広さも伺えます。

兼ねてよりタランティーノ監督は「長編映画を10本撮り終えたら映画監督を引退する」と発言しています。今作「ワンスアポンアタイムインハリウッド」(※以下「ワンハリ」)は9作目の監督作品。引き際を大切にしたいと語るタランティーノ監督のラストランとなる10作目は一体どんな作品になるのか、筆者も首を長くして待ちたいと思います。

リック・ダルトン役|レオナルド・ディカプリオ

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落ち目の俳優リック・ダルトンを演じるのは、アメリカ出身の俳優レオナルド・ディカプリオ。 1997年公開の映画「タイタニック」で爆発的な人気と知名度を獲得し、日本でも「レオ様」ブームが到来しました。

その後のキャリアは映画ファンなら言わずもがな。立て続けに大作映画に引っ張りだことなり、スティーブン・スピルバーグ監督やマーティン・スコセッシ監督とタッグを組み、常にハリウッド映画の中心にいる人気俳優の一人となりました。

今回ワンハリで演じたのは落ち目の俳優という役柄。昔のレオ様のように、ザ二枚目という役柄ではないですが、ハリウッドで再びのし上がろうと奮闘するリックを人間味たっぷりに演じています。少し頼りないくらいの役柄がとても生き生きしているように感じたりします(笑)

クリフ・ブース役|ブラッド・ピット

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リックの親友でありスタントマンのクリフ・ブースを演じるのはアメリカ出身の俳優ブラッド・ピッド。映画「ファイトクラブ」のタイラー役などで知った方も多いのではないでしょうか。あと彼の愛称である「ブラピ」は日本ではすっかり浸透していますよね。

今回ブラピが演じるのはスタントマンという裏方の役柄。ハリウッド内で妻殺しの噂を立てられていたりと、バックボーンが定かではないが、リックを絶対に裏切らない仲間思いの親友クリフを見事に演じきっています。

ファイトクラブの頃のブラピもカッコよくて好きですが、歳を重ねて落ち着いた雰囲気のでてきたブラピもこれまた渋くて好きです。今回クリフ役でブラッド・ピッドは悲願のアカデミー賞を獲得しています。


3 ワンハリで登場した「ヒッピー」とは?

ワンハリの舞台は1960年後半。60年代は社会や戦争などへの反発から、愛と平和を謳ったヒッピー文化というものが流行していました。ヒッピー文化は主に自然を愛し、自由なライフスタイルを求めたヒッピーという人々によって形成された文化のことで、様々なカルチャーや思想などに影響を与えたとされており、60年代ハリウッドを語る上では欠かせないものです。

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劇中でもヒッピーの女の子は車を持たずにヒッチハイクで目的地まで出向こうとしているし、パトカーを見たら「この豚野郎」なんて言う始末。劇中でも当時のヒッピーらしさを感じれるシーンが盛り込まれています。

ヒッピーとマンソンファミリー

ワンハリの背景となっている「シャロンテート事件」。調べてみると、このシャロンテート事件とヒッピー文化というのはかなり密接に繋がっているんですよね。

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幼少期に幾度となく軽犯罪を繰り返し、刑務所を往来するような生活を送っていた「チャールズ・マンソン」という男がいました。マンソンは1967年に仮釈放されると、すぐさまヒッピー文化に付け入り、愛と平和を掲げるヒッピーの女性たちをものにしました。今度はその女性たちを使って、男女を問わずマンソン信者を集めることに成功し、マンソンファミリーを築きあげました。

マンソンはファミリー内でのカリスマ的立ち位置を手に入れると、それ以後信者たちへの教えが暴力的なものになっていきます。マンソンファミリーは、チャールズ・マンソンの言うことなら犯罪までも厭わずにやり遂げる集団に変貌を遂げるのです。自由を謳うヒッピーだからこそマンソンのカリスマ的なものに魅せられてしまったのかもしれません。

そして、1969年8月8日、ワンハリの背景となるハリウッドを震撼させる事件が起きるのです。


4 目が離せない衝撃のラスト13分

ワンハリは日本で「ラスト13分 映画史が変わる」とキャッチコピーが用いられており、一体どんな結末が待ち受けているのか、筆者も期待していました。(*このトピックはネタバレありで記載するので、是非ワンハリを視聴した後でご覧になってください)

そもそもシャロン・テート事件とは

1969年8月8日深夜、チャールズ・マンソンから「テリーの家へ行き、全員殺せ」と命令を受けたマンソンファミリーの一味は、車でポランスキー邸にやってきます。ポランスキー邸では男女4人がパーティーの真っ最中。シャロン・テートはポランスキーとの間の子供を妊娠中で、この時8ヶ月でした。

そしてマンソンファミリーはポランスキー邸に侵入し、シャロン・テートとお腹の中の子供、テートの友人たちを惨殺しました。以上がハリウッドを震撼させた実際のシャロン・テート事件。でもタランティーノはそうは描かなかった。

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タランティーノが映画史に魔法をかけた(ネタバレあり)

マンソンファミリーの一味がポランスキー邸前にやってくると、酔ったリックがそのエンジン音に腹を立てて家から出てきます。「マフラーを直せ、くたばり損ないの車で俺の道路から失せやがれ」と罵声を浴びせ、一味は一時撤退を強いられます。

しかし、引き下がるわけにもいかないマンソンファミリーの一味は、リックをも標的にし、再び襲撃を開始します。ただそれが誤算でした。

一味を待っていたのは犬の散歩から帰ってきたクリフ。LSD漬けのタバコで完全にラリっているクリフは、自分に銃を向けた男を見ると、犬に合図しその男に噛みつかせ、戦闘不能にさせます。他の仲間もクリフを殺そうと躍起になりますが、ラリってるクリフには全く通用せず、原型をとどめないくらいにボッコボコにされます。最後はプールでチルをしていたリックのもとに残りの一人が暴れながらやってきますが、リックが以前出演した映画で使った火炎放射器でその一人を焼き払います。シャロン・テートは襲われるどころか、その前にリックとクリフによって撃退されるという結末となります。

賛否のあるラストとなった本作ワンハリですが、映画界の未来を担うはずだった女優シャロン・テートの死に対してのタランティーノ監督にしかできない魔法を映画を通してかけたのだと感じました。


5 ワンハリで登場した子役は誰?

個人的にワンハリでかなり好きなシーンがあるのですが、西部劇の撮影の休憩中に、セリフが飛んでしまい自信を喪失しているリックの前に現れる子役とのシーンです。

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自身のキャリアの未来が不安なリックは、子役女優の隣に座って本を読み始めます。子役女優に「何の本を読んでいるの?」と聞かれると、リックは「ウエスタンだよ」と言い、その本の内容を話し始めますが、物語の主人公が現在のリックの鳴かず飛ばずな状況とリンクしており、話しながらリックは泣き始めてしまいます。そんな姿を見られ子役の子に慰められるリック。

演技本番となり、リックは悪役として迫真の演技を見せると、監督から称賛の声をもらいます。そして、先ほどの子役女優に耳元で「今まで生きてきて最高の演技だったわ」と言われ、目には光るものが。グッとそれを噛み締めながら「リック・ダルトン様だ」と自分に言い聞かせるように言います。リックが前向きになるきっかけとなったシーンでもあり、筆者も少しうるっときてしまいました。

子役女優役|ジュリア・バターズ

リックと共演した子役女優役は、アメリカ出身の女優ジュリア・バターズです。父親は数々のディズニー作品のアニメーターを担当しているダリン・バターズ。劇中で「ウォルト・ディズニーは天才」というセリフがあるのですが、果たして偶然なのか(笑)

ジュリアは女優としての活動だけではなく、将来的に監督になりたいと語っており、今後の彼女の活躍にも期待です。


6 ワンスアポンアタイムインハリウッドの評価

ワンハリは映画評論家などからも軒並み高評価を受けており、海外の映画評価サイトでも10点中7.6点の高得点を叩き出しています。

ユーザー評価でマイナスな意見として、上映時間の長さを指摘されたりもしています。3時間近くあるので、少し構えて見なければならないという評価もわかります。ですが、飽きさせない構成となっているので、筆者は見始めたらあっという間という感覚でした。

視聴前に不安な方は、評価サイトなども参考にして映画をご覧になってはいかがでしょうか?


7 ワンスアポンアタイムインハリウッドはどんな人におすすめ?

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ワンハリは映画ファンだけではなく、ライトな層の方にも楽しんで頂ける内容になっています。シリアスなシーンや笑えるシーンが、タランティーノ監督がこだわり抜いた60年代ハリウッドの街に溶け込んでおり、まるでタイムスリップしたかのような感覚にさせてくれます。

強いて言うなら、シャロン・テート事件の概要を調べておかなければ、結末が汲み取れないシーンもあるので、前述したシャロンテート事件の概要を頭に入れておくと、よりワンハリの世界を楽しめること間違いなしです。

こだわり抜かれたタランティーノ節全開のワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド。皆さんもご覧になってみてはいかがでしょうか?


8 ワンスアポンアタイムインハリウッドが好きな人におすすめの映画

イージー・ライダー

©1969 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

あらすじ

マリファナの密輸で大金を得たワイアットとビリーは、大型オートバイを手に入れて旅に出た。南部を目指して気ままにオートバイを走らせる2人は、ヒッピーのジーザスと出会い、彼の村を訪れる。しかし行動で自由を表現する彼らを、村人たちは拒絶する。

©1969 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

ワンハリが好きな方におすすめするのは映画「イージー・ライダー」です。ワンハリと同じく、この「イージー・ライダー」も1969年が舞台となっており、当時の空気感がそのまま反映された内容となっています。

当時のアメリカ国内では反戦運動が高まっており、そんな鬱屈とした状況に対して、真の自由を渇望する若者たちが多くいました。「イージー・ライダー」の中で気ままに旅をしていく主人公たちは、当時の若者たちが求めた自由を代弁するような映画となったのは間違いありません。

69年という時代を色濃く映し出したアメリカン・ニューシネマを代表する1作。この機会に是非ご覧になってはいかがでしょうか。