祝!アカデミー賞 映画「ベルファスト」 レビュー|ケネス・ブラナーの幼少期が投影された傑作

ベルファスト

製作・監督・脚本|ケネス・ブラナー

公開|2022年

上映時間|98分

製作国|イギリス

配給|パルコ・ユニバーサル映画

https://belfast-movie.com/

1 あらすじ

北アイルランド、ベルファストに住む9歳の少年バディは、家族や友人に囲まれ、好きな映画やテレビ番組を見たり、楽しく充実した日々を送っていた。しかし、1969年8月15日、プロテスタントの武装集団がカトリック住民を攻撃したことで、彼を取り巻く環境は一変する。住民の誰もが顔馴染みで、バディにとっての唯一の世界ベルファストが分断されてしまう。そんな中、バディの家族は故郷を離れるべきかの決断を迫られて、、、

2 ベルファストの監督・キャスト

製作・監督・脚本|ケネス・ブラナー

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映画「ベルファスト」の監督を務めたのは、シェイクスピア俳優としても名を馳せるケネス・ブラナー。ケネス・ブラナーは、北アイルランド・ベルファスト出身で、幼い頃から演技を学び、王立演劇学校を首席で卒業すると、23歳でロイヤル・シェイクスピア・カンパニーに入団し、多くの舞台に立つ。俳優としてだけではなく、監督としての才能も豊かで、「ヘンリー5世」や「オリエント急行殺人事件」、「マイティ・ソー」など、シェイクスピア作品だけではなく、ハリウッドの娯楽大作なども手がけ、大成功を収めている。

そんなケネス・ブラナーが今回メガホンをとったのは、自身の幼少期を投影して描いた自伝的作品「ベルファスト」。コロナ禍のロックダウンをきっかけに脚本の執筆を始め、完成すると同時に製作を開始し、ロックダウンの後、撮影再開の許可を最初に得た作品の一つとなった。9歳の少年バディは、まさにケネス・ブラナーの幼少期の再現のようであり、彼の視点で激動の1969年ベルファストの物語が進んでいく。

バディ役|ジュード・ヒル

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主人公のバディ役を演じるのは、本作が俳優として初の長編映画デビューのジュード・ヒル。北アイルランド・ギルフォード出身のジュード・ヒルは、出身こそベルファストではないものの、本作で描かれる「ベルファスト」の家族の一員として、自然体でバディを演じきった。

バディの目線で進んでいく物語で、ワクワクしたり、切なくなったり、人のことを好きだと思ったり、なんだか大人になるにつれて忘れてしまいそうなことを、ジュード・ヒルは全身で表現していて、とても好きになりました。彼の今後の出演作品も要チェックです。

マ役(左)|カトリーナ・バルフ

パ役(右)|ジェイミー・ドーナン

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マ役を演じるのは、アイルランド・ダブリン出身のカトリーナ・バルフ。10年以上のファッションモデルとしての経験の後、俳優業を始め、「グランド・イリュージョン」やドラマ「アウトランダー」などでブレイク。今作では、厳しくも温かいベルファストを愛する母親を演じた。

パ役を演じるのは、北アイルランド・ベルファスト出身のジェイミー・ドーナン。ディオールなど様々なファッションブランドで人気モデルとして活躍した後、俳優に転身。少しお金にはルーズなところがあるが、2人の息子を愛し、なんとしてでも家族を守ろうとする良き父親を演じた。

「ベルファスト」はもちろんバディの体験する出来事が中心なのですが、バディを育てるマとパの温かさは見ていてほっこりします。時にはぶつかることもある2人ですが、2人の息子を愛する気持ちは同じで、2人3脚で助け合いながらベルファストで生活する姿は、1969年当時のベルファストの暮らしが容易に想像できました。

グラニー役(左)|ジュディ・デンチ

ポップ役(右)|キアラン・ハインズ

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バディの祖母グラニーを演じたのは、イギリスが誇る世界的大女優のジュディ・デンチ。イギリス・ヨーク出身のジュディ・デンチは、数々の舞台・映画・ドラマに出演しており、「007」シリーズの三代目M役などでも人気を博した。87歳となった現在でも多くの映画に出演しており、作品に深みを与える、まさに生きるレジェンドのような存在だ。バディの悩みに対してまっすぐに向きあい、時には少し辛口だが知的なアドバイスをする祖母を演じた。

バディの祖父ポップを演じたのは、北アイルランド・ベルファスト出身の俳優キアラン・ハインズ。ベルファスト出身ということもあり、脚本を読んで当時のことを思い出したというキアラン。人の温かさや街全体の雰囲気は当時のままに再現されていると語っている。家族やベルファストの人たちに愛される、ユーモア溢れる祖父を演じた。

この夫婦とても見ていて温かさを感じると同時に、お互いいつまで経っても愛と信頼があるということが伝わってきました。中でも祖父のポップは、ユーモアと深い言葉でバディにアドバイスをするのですが、その言葉たちがスクリーンを通して私たちの心に響きます。ジュディ・デンチの祖母もとても良かった。映画終盤でのあの一言は胸に刺さるものがあります。

3 ケネス・ブラナー監督の過去作を無料で見るには?

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4 そもそもベルファストってどこ?

ベルファストはイギリス・北アイルランドにある都市です。ベルファストは、北アイルランドでは最大の都市で、人口は61万人以上。映画冒頭でも現在のベルファストの街並みが映し出されていましたが、H&Wの造船所のクレーンやタイタニック号の造船所など観光スポットと言われるところもたくさんあるようです。

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ベルファストを旅行した際には、様々な観光名所に立ち寄るのも映画を観た後の楽しみの一つですよね。

5 ベルファストを彩る音楽

映画「ベルファスト」のサウンドトラックのほとんどは、ベルファスト出身のアーティスト、ヴァン・モリソンの曲で構成されています。ロックやブルースの音楽を主とするヴァン・モリソンは、1993年にロックの殿堂入りを果たし、音楽界のレジェンドとなります。

https://www.virginmusic.jp/van-morrison/

今作でヴァンモリソンの楽曲を使用することになったのは、監督であるケネス・ブラナーがヴァン・モリソンと繋がったのがはじまりです。ケネス・ブラナーは幼少期からヴァン・モリソンは偉大な存在として認識しており、憧れの人と共に仕事ができるのは貴重な体験だったと語っています。個人的に「ベルファスト」で使用された楽曲はどれも好きなのですが、とりわけ印象的だった曲を少し紹介しようと思います。

「Warm Love」|Van Morrison

バディがキャサリンと教室で目を見合わせるロマンチックなシーンでかかっていた曲。ベルファストで突如暴動が起きて街が揺れ動いたのに、バディの好きという気持ちは動かないんだなとわかる、とても素敵なシーンでした。

「Days Like This」|Van Morrison

バディ一家が自然の中で遊んでいるシーンでかかる曲。パは仕事の都合で2週間に1度しか家に帰ってきませんが、帰ってきたら家族との時間を目一杯楽しむのは素敵ですよね。ピンポイントで野球ボールを頭の上の的に当てるパはすごい(笑)。個人的にはサントラの中で一番好きな曲です。

6 ベルファストが伝えたかったこと

まず、この「ベルファスト」という映画は、監督であるケネス・ブラナーの自伝的な作品であるということです。時代の転換期だった1969年のベルファストを肌で体感したからこそ、カトリックとプロテスタントの対立により生まれた暴力の危険などは、ケネス・ブラナーの記憶を元に鮮明に再現されていました。

もちろん、この暴力に晒される危険によって、人々が不安になることというのは映画の中で幾度となく描かれていますが、ケネス・ブラナー自身が伝えたかったのはそれだけではありません。

愛する故郷と家族

ベルファストでの治安が悪化していく中で、家族たちはこの愛する故郷に残るべきなのか、それとも移住するのかという2択を迫られます。家族を守りたいパは移住を提案しますが、マにとってはベルファストという街は全てであり、友達も親戚もいて、子供の頃からの安住の地でした。もちろんパもマも故郷と家族に対する思いは同じでしょうが、やはり選ばなければいけないというのは酷な話ですよね。

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現実では、世界中がコロナ渦という時代に突入しました。外に出るということだけで、不安というものが付きまという時代です。これは、劇中でのベルファストの、突然暴動が起きて市民が外の世界に怯える状況に少し似ていますよね。実際、監督のケネス・ブラナーは、コロナ禍のロックダウンを経験し、突然生活が変わってしまう状況と、自分の幼少期に体験した暴動は共通点が多く、ロックダウンも製作理由の一つとして語っています。

こんな時代だからこそ

映画では、故郷や家族といったテーマは普遍的なものではあります。ですが、この「ベルファスト」は、コロナ禍というこの現実ともリンクして、観る人の心を強く打つ内容になっています。突然生活は変わってしまって、今までのようにはできないけど、改めて愛する故郷や家族を思い、考えて、何かを守ろうとする人間の強さがこの「ベルファスト」には詰まっています。ケネス・ブラナーは、自分の人生を少し振り返りながら、そんなことをスクリーンを通して伝えようとしているのではないかと考えました。

7 祝 アカデミー賞 脚本賞受賞!

映画「ベルファスト」は、アカデミー賞の作品賞や脚本賞など、計7部門でノミネートされていました。そして、3月27日の授賞式で「ベルファスト」は、アカデミー賞の脚本賞を受賞しました。ケネス・ブラナーにとっては初めてのオスカー獲得となり、壇上でも喜びの笑みを浮かべてスピーチをしていました。

ケネス・ブラナー監督の半自伝映画「ベルファスト」は老若男女が楽しめる、素敵な家族愛・故郷愛の物語となっています。文化や人種の違いはあれど、外に出る恐怖というものを全人類が体感したこの時代だからこそ、何か受け取れるものがあるのではないかと思います。気になった方はぜひご覧ください。