【感想&考察】LAZARUS ラザロ 第11話で終末世界の足音が響く|羽根のネックレスと混沌の意味

公開日|2025年6月19日

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第10話の記事はこちら↑から読めます

*ネタバレが含まれております

ハプナ事件の真相に迫る中で、最強の敵と対峙することになった第11話。

サブタイトルは『RUNNIN’ WITH THE DEVIL』ということで、こちらはヴェンヘイレンのデビューアルバム「Van Halen」の、1曲目に収録された楽曲が由来となっています。

℗ 1978 Warner Records Inc.

印象的な車のクラクション音から始まり、気持ち良い程ハードなメロディが続いていくロックソング。

ここからアメリカのハードロックの歴史を塗り替える事を考えると、伝説的な1曲とも言えるのではないでしょうか。

放題は「悪魔のハイウェイ」となっており、燃え盛る高速道路で、アクセルに忍び寄る殺し屋の双竜に通ずるものがあります。

相変わらず渡辺監督はセンス抜群の選曲(タイトル決め)をするなと感じました。

これは余談ですが、先日発売された「別冊ele-king 渡辺信一郎のめくるめく世界」に掲載されていた監督のインタビューや、生涯ベスト100アルバムを読むと、より音楽を聴きたいという欲求と知的好奇心が同時に刺激されるので、まだ読んでいない音楽ファン、渡辺作品のファンの方はこの機会に是非。

LAZARUS ラザロ

原作・監督|渡辺信一郎
アクション監修|チャド・スタエルスキ(87Eleven Action Design)
キャラクターデザイン|林明美


制作|MAPPA
放送|2025年4月〜
話数|全13話

LAZARUS ラザロ Vol.1(完全生産限定版) [Blu-ray]


ダグとエレイナの追跡

スキナーに繋がる唯一の鍵、凄腕ハッカーのポップコーン・ウィザードを追う為に、パキスタンへ向かったダグとエレイナのバディ。

前回からエレイナは、高熱の症状が出ており、タイミング的にはハプナによるものかと推測されます。

ダグに心配をかけまいと、ひたすらに平静を保っていたのは健気でしたが、世界を救うことは彼女にとって使命なのだという、強い意思が芽生えているようにも感じられました。

ただこの時笑ってしまったのは、世界が平和になったら何がしたいかという2人の会話の中で、某巨大ファストフード店を思わせるMバーガーのビッグMの話が出てきたこと(笑)。

©2024 The Cartoon Network, Inc. All Rights Reserved

不味いけどたまに無性に食べたくなるエレイナと、普通に好きだというダグの間に、なんとも言えない空気が流れていました。

エレイナが不味いと感じるのは、元々コミューンの美味しい食事で育ってきたことも関係してるのかと思いましたが、潜入時にリーランドが食べる寸前だった謎の紫の液体を思い出すと、彼女の舌が肥えているとは思えないんですよね(笑)。

いずれにせよ平和になった世界で、2人してビッグMを頬張る姿は想像するだけで微笑ましいので、その画を見てみたいです。

そんな中、陸軍情報部から追跡されていることに気付いたダグは、エレイナを先に行かせる為に、身を挺して足止めをします。

この時、車に轢かれてしまったダグの容態が気になりますが、エレイナは彼の行動を無駄にしないようにと、高熱で体が思うように動かない中で、ついにポップコーンの元に辿り着くことができました。

以前エレイナとポップコーンは、お互いが「セックス・ピストルズ」好きで心が通じ合っていたこともあり、顔を見た瞬間に嬉しそうにしていたシーンは印象的。

しかし、ポップコーンが何故スキナーに協力しているのかは現時点では分からず、次回高熱で倒れてしまったエレイナを介抱する過程で明かされていくことになるのでしょうか。

ポップコーンは、スキナーに対して何かしらの恩があり、その恩を返す為に行動を起こしているのか、はたまた実はスキナーと血の繋がりがある、なんてことも考えられそうです。

そしてポップコーンに接触できたということは、肝心のスキナーの居場所も明かされることになりそうなので、次の展開がより一層気になりますね。


決死の一騎打ち

前回アクセルが、アリゾナの刑務所で行われた、違法なハプナの臨床試験に参加させられていた事実が判明しましたが、その主導をしていたのは陸軍情報部だと判明。

被験者全員が死亡したとされる実験でしたが、アクセルが何らかの理由で生き残ってしまった為、陸軍は証拠隠滅の為に幻の殺し屋双竜を使って彼を消そうとしていました。

アクセルは、そんな実験の真実を知るアリゾナの刑務所にいた医師の保護に向かう道中で、奇襲を仕掛けてきた双竜との戦いが勃発します。

幽霊のような存在と謳われていた双竜なので、てっきり人けのない場所に連れ出して暗殺を遂行するのかと思っていましたが、手榴弾やテルミットを駆使して、道路の中央で多数の被害者を出しながら爆発騒ぎを起こしていたのは意外でした。

そんなとんでも戦闘スタイルに驚くアクセルでしたが、彼も彼で戦闘狂なので、互角にやり合っていく姿は、まさに頂上決戦に相応しかったです。

今回の第11話のアクションでは、本作に大きく貢献している映画「ジョン・ウィック」シリーズのチャド・スタエルスキさんの監修が入っていないのですが、パルクールや肉弾戦、飛び道具を使った戦闘など、細部に渡って作り込まれた素晴らしいアニメーションになっており、圧巻以外の言葉が見つかりません。

夜の超高層ビルを背景に、爆速で進むトラックの上で格闘するシーンは、アニメならではの煌びやかさと映画的なリアルさの良い所を組み合わせた至極の1シーンになっており、本作の中でも指折りの名場面ではないかと思いました。

©2024 The Cartoon Network, Inc. All Rights Reserved

最強同士のタイマンバトルは互角のまま続いていくのかと思われましたが、最後の最後にアクセルは双竜の投げた銛で腹部を貫かれ、瀕死の重傷を負ってしまいます。

クリスが直ぐに助けに来たことで、双竜は退散しますが、肝心のアクセルは絶対に助からないであろう出血の仕方をしていましたし、生き延びれたとしても、残り5日というタイムリミットの中で彼が以前のように動き回れるとも思えません。

ただ、以前アクセルが天使の羽根のペンダントを身に付けている限り不死身という話があったように、もしかすると何事も無かったかのように復活する展開も考えられそうです。

EDで大量の死体の中で、アクセルだけが立ち上がっているのも伏線に間違いなさそうですし、まだまだ明かされていない謎は多いですね。


混沌(ウェントン)とは何なのか

双竜がアクセルとの戦闘の中で、羽根のペンダントを見た際に、自身が暗殺者として訓練されたであろう学校の記憶がフラッシュバックしていましたが、そこで何やら混沌(ウェントン)というキーワードが出てきました。

この混沌とは中国の神話に登場する顔の無い神のことで、人間のように目や鼻や口を作ろうと穴を開けていくと、最後には死んでしまうという何とも切ない話となっています。

©2024 The Cartoon Network, Inc. All Rights Reserved

双竜が感情に乏しいのは、彼が「心を捨て顔の無い怪物となるのだ」という教官らしき男の教えを守った結果でもあると思いますが、混沌の話を照らし合わせると、その教え故に人間らしい個性を失ってしまったという解釈ができます。

しかも、彼は暗殺者としての生き方しか知らないので、個性を与えられたとしても、並の人間として生きることなど到底できないという事なのでしょうか。

そんな自身の忌々しい過去を思い出した双竜は、激しく動揺を見せていましたが、これは彼の悲しき過去に過ぎないのか、はたまたハプナ事件やアクセルの過去と密な繋がりがあるのかは気になるところです。

ちなみに今回の話で、ラザロの指揮官であるハーシュが、しつこく邪魔をしてくる陸軍に手ぶらで乗り込んで行き拘束されてしまいましたが、果たしてどんな考えからの行動だったのかは疑問でした。

敵地に潜り込んで、お願いだけして捕まるというのは指揮官としてはずさんな作戦としか思えないので、何か策があってのことなのでしょうか。

陸軍に乗り込む前に、アベル宛に手紙を託していたことからも、その内容の中に何かしらの作戦が記述されているのか、ラザロが窮地に立たせれている中で、もしかしたら彼女の一手が世界を救うきっかけを作るのかもしれませんね。

あとは流れに身を任せ、残り2話を楽しみたいと思います。


渡辺作品のファン必読の2冊

洗練された唯一無二のアニメーションで、国内外に多くの熱狂的なファンを獲得し続けている渡辺信一郎監督ですが、その半生の振り返りや濃密なインタビューが載ったファン必読の2冊が発売されるということで、気になった方はそちらも是非チェックしてみてください。

※ちなみに筆者は、先日発売された「別冊ele-king 渡辺信一郎のめくるめく世界 (ele-king books)」を読破しましたが、渡辺作品のファンなら堪らない、音楽についての濃密な話も掲載されていて、かなり読み応えがあり楽しめました。

別冊ele-king 渡辺信一郎のめくるめく世界 (ele-king books)

渡辺信一郎の世界 『カウボーイビバップ』から『LAZARUS ラザロ』まで (KADOKAWA)