衝撃の問題作 アニメ「残響のテロル」徹底レビュー|あらすじ・声優・解説・無料で見る方法など
公開日|2022年5月16日 最終更新日|2024年10月16日
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今回紹介するのは、2014年にフジテレビのノイタミナで放送されたアニメ「残響のテロル」。キャッチコピーに「この世界に、引き金をひけ。」とあるように、少年たちがテロを起こすという過激な内容で話題になった本作だが、そこに描かれているのは繊細で緻密なストーリーだった。そんなアニメ「残響のテロル」を、キャストや音楽、解説などを交えながらレビューしていく。
Contents
残響のテロル
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※本ページの情報は2024年10月時点のものです。
最新の配信状況は各配信サイトにてご確認ください。
1 残響のテロルの評価
アニメ「残響のテロル」のおすすめ度
★★★★★★★★★☆|9/10
2 残響のテロルの作品情報
あらすじ
ある暑い夏の日。元警視庁捜査一課の刑事、柴崎は、左遷された文書課で漫然とした日々を送っていた。しかし、柴崎は、同僚が観ていた動画投稿サイトに挙げられた、スピンクス1号・2号と名乗る人物たちの「新宿方面ではところによりでっかい花火があがるでしょう」という犯行声明じみた動画に何か不穏な気配を感じていた。そして、突如起こった、都庁での大規模爆破テロ。日本を震撼させたこの事件の犯人は、たったふたりの少年だった。そして、スピンクス1号・2号は新たな動画を公開し、なぞなぞに答えられなければ爆破をするという挑戦的な犯行声明を出す。スピンクスの目的は一体何なのか、柴崎は事件の解明のために奔走するが、それは、やがて国家を揺るがす闇へと繋がることになり、、、。
残響のテロルのキャラクター
ナイン(九重 新)
本作の主人公。17歳。頭脳明晰で常に冷静。ツエルブと共に青森の核燃料廃処理施設からプルトニウムを強奪する。姿を眩ましてから半年後、東京で九重新という偽名を使い、普通の高校生として暮らし始める。その真の目的は不明。
ツエルブ(久見 冬二)
本作のもう一人の主人公。17歳。明るく無邪気な性格。ナインと同じ経緯で、久見冬二という偽名を使い高校生として暮らし始める。常にナインと行動を共にしているが、いじめを受けている三島リサのことも気にかけている。その真の目的は不明。
三島リサ
本作のヒロイン。クラスでいじめられており、家庭内でも、精神的ストレスを抱える母親からの干渉に悩んでいる。ツエルブたちに出会うことで、彼女の運命は大きく変わることとなる。
柴崎健二郎
警視庁の文書課。かつては捜査一課の敏腕刑事だったが、ある事件をきっかけに左遷されてしまう。スピンクスの動画にいち早く疑念を抱くなど、刑事としての嗅覚は衰えていない。
ハイブ
アメリカ政府から、FBIと共に派遣された、核研究支援隊(NEST)の原子力科学者。その正体は、トップシークレットとなっており、警察内部でも知るものはごくわずか。ナインとツエルブとは面識があるようだが、その真の目的は不明。
残響のテロルの監督・キャスト(声優)
原案・監督|渡辺信一郎
アニメ「残響のテロル」の監督を務めるのは、京都府出身のアニメ監督、渡辺信一郎。94年「マクロスプラス」で監督デビューを果たすと、98年「カウボービパップ」では抜群のセンスを活かした作風と演出で、国内外問わず、カルト的な人気を博した。
本作「残響のテロル」は、過去にオリジナル企画を何本も考えていたが、実現せずにいた時に、フジテレビから声がかかり、5年以上の歳月を経てようやく実現した作品である。
完全オリジナルストーリーであり、テロを扱った題材のため、挑戦的な内容ではあるが、アクションサスペンスや青春劇も相まって、観る者の心を掴んで離さない作品となっている。
昔から、余韻が残る作品が好きなんです
https://terror-in-tokyo.com/より
このように語る監督の本作は、この世に挑戦し、その名の通り、残響を残すような至極の一作となった。
ナイン役|石川界人
ナイン役を務めるのは、声優の石川界人。12年「あの夏で待ってる」でアニメデビューを果たすと、以降は様々な作品で主演級のキャラクターを担当している。
個人的には本作「残響のテロル」のナイン役の印象が強く、クールな役柄が多いイメージだったが、「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」などでは、真っ直ぐで優しい高校生を演じており、その役柄の幅広さも伺える。
ツエルブ役|斉藤壮馬
ツエルブ役を務めるのは、声優の斉藤壮馬。声優のオーディションで優秀賞を獲得し、声優養成所を経て、声優デビューを果たすと、14年「アカメが斬る!」では、主人公タツミ役を演じる。
本作ではナインとは対照的な、明るく純粋な性格のツエルブを演じた。明るいだけはない、含みがあるミステリアスな声は、ツエルブのキャラクターをより魅力的なものにした。
三島リサ役|種崎敦美
本作のヒロイン、三島リサ役を務めるのは、声優の種崎敦美。養成所を経て声優デビューを果たし、出演作には「響け!ユーフォニアム2」や「魔法使いの嫁」などがあり、現在放送中(執筆時)の「SPY×FAMILY」のアーニャ・フォージャー役は国内外問わず大反響を呼んでいる。
本作では、いじめや家庭問題で悩むヒロインを演じた。どこかに居場所を求める等身大の姿は、誰しもが共感するのではないだろうか。
柴崎健二郎役|咲野俊介
スピンクス事件を追う刑事、柴崎健二郎を演じるのは声優の咲野俊介。養成所などには通わずに、独学で声優技術を培った。吹き替えでは、イーサン・ホークやパトリック・ウィルソンの声を担当している。
本作では、頭はキレるが、ある事件をきっかけに文書課に左遷された刑事だが、それでも正義感は失っていないというキャラクターだ。冷静で説得力のある渋い声は「残響のテロル」のサスペンスの側面をさらに盛り上げる。
ハイブ役|藩めぐみ
アメリカから派遣された原子力科学者のハイブを演じるのは、声優の藩めぐみ。11年「HUNTER×HUNTER」の主人公ゴン・フリークス役に抜擢されると、以降は様々な作品で主役級のキャラクターを演じる。
スピンクスを翻弄するハイブだが、他のキャラクターとは違う異様な雰囲気を、子供っぽさもありながら、小悪魔的なボイスで魅力たっぷりに演じた。
3 残響のテロルを無料で見るには?
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4 菅野よう子の冷たく研ぎ澄まされた音楽
菅野よう子
残響のテロルの1話から引き込まれるのは何と言っても音楽。監督の渡辺信一郎は、音響に非常にこだわりを持っており、効果音やセリフの音の響き、音楽の細部までを徹底して作り込むことで有名だ。
本作の音楽を担当したのは、菅野よう子。アニメだけではなく、朝ドラや大河ドラマ、CMソングなどあらゆる分野で活躍する音楽プロデューサーだ。渡辺信一郎と菅野よう子がタッグを組むのは、98年「カウボーイビバップ」12年「坂道のアポロン」に続き3度目となる。
「なんかこのアニメの音楽、かっこいいな」と思い、調べると、菅野よう子の音楽が多いのは、アニメファンの方なら”あるある”なのではないだろうか。
「残響のテロル」では、アイスランドの曲をモチーフにして楽曲を制作しており、聴くと、冷たく、鋭く、それでいてどこか切なさを感じるような仕上がりになっている。暑い夏の日が舞台なので、キャラクターたちは汗をにじませているが、見ている方は、なんだが風鈴の音を聴くような涼しげさえある。
中でもサウンドトラックの5曲目「fugl」は、テロを起こす少年たちの心情のようなものが表れており、心を揺さぶられた。
鑑賞の際には、音楽にも注目してみてはいかがだろうか。
残響のテロルのサウンドトラックはこちら
↓
5 スピンクスとアネテ計画(ネタバレあり)
次々と爆破テロを起こすスピンクス。しかし、柴崎は、そこには共通点があると気づく。それは、爆破された建物に関わるトップが全員、新進平和塾という団体のセミナーに参加していたということ。つまり、スピンクスが標的としているのは新進平和塾と何らかの関わりがあることになる。
空港での爆発騒ぎの後、休職処分となってしまった柴崎は、単独でスピンクスと新進平和塾の調査を進める。新進平和塾は以前子供の英才教育を目的とした「アテネ計画」なるものを実施しており、アテネは、スピンクスと同じくギリシャ神話に登場する知恵の女神であることに気づく。しかし、どの公文書にも「アテネ計画」についての記載はなかった。
柴崎は新進平和塾のメンバーである藤川という政治家に揺さぶりをかける。「アテネ計画」は全国の孤児を対象にテストをし、優秀な子供たちを集め、その子供たちの痕跡を何らかの形で消していたと吐かせることに成功する。そして、その計画には、最先端医療の組織などが絡んでいた。
調査を進めるうちに、「アテネ計画」の関係者である、厚生省の青木という男にたどり着いた柴崎だったが、そこで衝撃の事実が判明する。「アテネ計画」は、90年代に脳機能の研究に携わっていた製薬会社が偶然開発した新薬を元に、人工的にサヴァン症候群を引き起こし、一部の分野で突出した能力を発揮する人間を作るという人体実験を行っていたのだ。
その新薬の効果は、成長期の5歳以下の子供にしか見られなかった。被験体の多くは、肉体的・精神的に追いやられ、ほとんどは死んでしまったのだった。その後、「アテネ計画」は米国の介入もあり、失敗に終わるが、26人の孤児のうち1人が生き残った。それが、あのハイブだった。
加えて青木は、施設から脱走した子供が2人いると言う。彼らは名前ではなく、数字で、9番と12番と呼ばれていたのだ。つまりナインとツエルブ。柴崎は、脱走した子供がスピンクスであると断定した。
そして、青木をも操っていた黒幕は、柴崎が左遷される原因となった大物、間宮俊造だった。
6 残響のテロルのラストを解説(ネタバレあり)
ナインとツエルブの真の目的
物語終盤、ナインは日本中に動画を公開する。その内容は「最後の爆弾は原子爆弾です。爆弾は22時に自動的に爆破します。もう誰にも止めることはできません。それでは日本の皆さん、さようなら。」というものだった。日本中が大パニックに陥ったため、政府は緊急事態宣言を発令し、関東全域に避難命令を出す。
しかし、柴崎は、スピンクスの過去の爆破テロでは死者数が出ていないことを鑑みて、今回の原子爆弾もただの大量虐殺ではないと考えていた。理工学部を専攻している娘の晴香からヒントをもらい、スピンクスが「高高度核爆発」を実行することを突き止める柴崎。「高高度核爆発」は強力な電磁パルスを発生させるもので、日本中の電子機器などは全て破壊するほどの威力を持つという。
ほとんどの電子機器を破壊することによって、国としての機能を完全に停止させる。これが、スピンクスの本当の狙いだったのだ。
この大惨事により、国はスピンクス事件とアテネ計画についての釈明が必要となり、葬り去られるはずだった闇を国民に明かさなければならない状況を作り出したのだ。最終話にて、ナインが孤児院の仲間たちの墓にハイブの墓を建てていた姿からも、報われなかった彼らに代わり、テロを起こしたのだとわかる。スピンクスは紛れもなく、この世界に引き金を引いたのだった。
スピンクスが柴崎を必要とした理由
スピンクスはテロの際に、高難易度のなぞなぞを出しながらも、誰かに解いて欲しいと言わんばかりだった。その理由は、自分たちが捕まることにより、全ての闇が白日の元に晒されると踏んだから。そしてそのターゲットとなったのが警視庁の柴崎だったのだ。
日本の都市機能が失われた後、ナイン・ツエルブ・三島リサは、アテネ計画が行われた施設にやってくる。そこに表れたのはやはり、柴崎だった。
「初めから捕まる気でいたんだろう」と柴崎が問うと、ナインは「そのことを突き止めて俺たちを捕まえにくる人間が必要だった。あんた自身がオイディプスだったんだ」と明かす。
初めて面と向かって喋るのにも関わらず、お互いの手の内を熟知しているのは、スピンクスも柴崎も信念を曲げない人間性を持つ者だからだろう。彼らは出会うべくして出会ったのだ。
スピンクスが残した「VON」の意味
柴崎は銃を構え、スピンクスを逮捕しようとするが、突然米軍のヘリコプターが現れる。ナインは原発に爆弾を仕掛けていると脅すが、その直後、ツエルブは米軍による銃撃を受け、死亡する。
泣き崩れるナイン。ナインは、爆弾のボタンを押そうとするが、それを柴崎が止める。ナインは爆弾のスイッチを柴崎に渡し、最後にこう言った「俺たちを覚えていてくれ。俺たちが生きていたことを」と。ナインは激しい耳鳴りと共に息をひきとる。(ナインが死亡したのは、アテネ計画の影響であると思われ、関係者の青木も「彼らもそう長くはない」と示唆していた。)
1年後、三島リサはナインとツエルブの墓参りに行き、その帰り道、柴崎とすれ違う。リサは、ナインが聞いていた曲はアイスランドの曲だったと柴崎に語る。そして、スピンクスが度々残していたワード「VON」の意味。それはアイスランド語で「希望」だと言い、別れの挨拶を告げた。
孤児であり、悲劇的な運命を辿るはずだったナインとツエルブだが、希望を捨てずに、この世界に真っ向から挑んだ。その証として「VON」と書き残したのではないだろうか。
ハイブは一体何をしたかったのか?
スピンクスの脅威としてハイブは常に計画の邪魔をしていたが、視聴中もその意図は不明だった。しかし、登場人物の中で、ハイブは1番純粋な人物だったのだ。それは「ただナインに勝ちたかった」ということ。施設にいた時から自分の常に上をいくナインに憧れていたハイブは、ナインを超えたいという思いだけでこれまで生きてきたのだ。
原因不明の不調(おそらくアテネ計画が原因)で一時は倒れるも、最後の力を振り絞りナインとの闘いに挑むハイブ。そして最後には「あなたがいたから私は生きることができた。あたしの分まで生きて」とナインに告げ、炎と共に自害する。
ハイブにとっての「VON」はナインであり、生きる目的そのものだったのだ。
7 少年少女たちが求める「自分の居場所」
オリジナルアニメ「残響のテロル」は、間違いなく社会に何かを問いかけた作品となった。都庁の爆破テロの後の、何事もなかったかのように動く社会。国家の闇。拡散される情報。そして希望。
登場人物がほとんど自分の内面をさらけ出さないのにも関わらず、表情や音楽などに数多のメッセージ性が含まれている作品は稀有だ。
三島リサは、いじめや母親から逃れ、自分の居場所を探したいと願う少女。ナインとツエルブも、詳しくは語られなかったが、施設から脱走し、テロという形で、生きた証を残したいと願った少年たちである。
自分を縛る何かがあったとしても、自分たちの居場所を探し、抗い、求める彼らの姿は、紛れもなく希望であり、私たちの心を突き動かした。セリフでも、ツエルブの「リサは必要な存在だったんだ」という物語終盤における彼のひとことは、悩める少年少女たちにとって大切な言葉なのだと痛感した。
大人という焦点でも「残響のテロル」で印象に残ったものがある。
警察に籠り、娘とろくに会っていなかった柴崎が久しぶりに娘に会い、「子供ってのはいつ間にか大人になるんだなって思ってな」と妻に言うシーンがある。なぜか印象的なシーンだったのだが、最終話でピンときた。
ナインとツエルブと会った時の柴崎の顔は、子供ではなく、大人に向ける眼差しであり、彼らの貫いた意志を全て受け止めるつもりだったのだと気付いた。大人の責任で運命を変えられた彼らのような存在から、目を逸らさないと決意したのではないだろうか。
様々な思いが駆け巡った「残響のテロル」。11話を完走した頃には、なんだか消化することのできない気持ちがあったが、それこそがスピンクスが残したテロの残響なのではないだろうか。
まだ観ていないという方にはぜひ観て欲しい。
VON
8 残響のテロルが好きな方におすすめのアニメ
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残響のテロルが好きな方におすすめしたいアニメは「ノイタミナ」初のオリジナル作品「東のエデン」です。
あらすじ
日本各地にミサイルが落ちた奇妙な事件から3カ月。森美咲は卒業旅行先のアメリカで滝沢朗という青年に窮地を救われた。しかし彼は記憶を失い、全裸で拳銃と82億円がチャージされた携帯電話「ノブレス携帯」を握っていた…。滝沢は自分の記憶を取り戻す過程で自分が「セレソンゲーム」という日本を救うためのゲームに参加していることを知る。
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