【感想&考察】LAZARUS ラザロ 第8話で明かされるクリスの過去|空港事故の謎と圧巻のアクション

公開日|2025年5月30日

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第7話の記事はこちら↑から読めます

*ネタバレが含まれております

物語も後半戦に差し掛かった第8話。

サブタイトルは『UNFORGETTABLE FIRE』。

© 1984 Universal Music Publishing International Ltd.

こちらはU2の曲(※正式にはThe Unforgettable Fire)であり、同名のアルバムも発売されました。

アンビエントミュージックの巨匠ブライアン・イーノをプロデューサーとして迎えた事でも知られる本アルバムですが、アンビエント要素というよりは、U2らしい荒削りなロックをベースに繊細さが足されたようなサウンドになっています。

もちろん8話の内容ともリンクしており、燃え上がる油田を見つめるクリスの心情は、まさにタイトル通り「忘れられない焔」だったのではないでしょうか。

LAZARUS ラザロ

原作・監督|渡辺信一郎
アクション監修|チャド・スタエルスキ(87Eleven Action Design)
キャラクターデザイン|林明美


制作|MAPPA
放送|2025年4月〜
話数|全13話

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クリスの過去

前回のラストで、ツバルにてハプナ事件の手がかりを探していたクリスは、彼女のことをよく知るロシアの特殊工作員インガに拘束されてしまいました。

今回の第8話では、クリスとインガの過去が掘り下げられることに。

かつてクリスはロシアの特殊工作員として活動をしていましたが、とある事故をきっかけに、名前を変え顔も整形してアメリカに亡命し、ラザロに参加したことが明かされました。

さらに彼女は、信用される為に、3日間連絡が取れなくなれば命が絶たたれるシステムを自ら提案するなど、相当な覚悟を決めた様子だったとのこと。

©2024 The Cartoon Network, Inc. All Rights Reserved

そんな背景を聞いたラザロメンバーは、居ても立っても居られなくなり、アクセルを筆頭に救出に向かっていきます。

ここは、メンバー間で強い信頼感と仲間意識が芽生えたことが分かるシーンになっていて、グッときてしまいました。

よく本作と引き合いに出される渡辺信一郎監督の作品「カウボーイビバップ 」では、一見するとドライな人間関係が描かれましたが、ラザロでは対象的に、チームの距離感がウェットな印象です。

たったの2週間とはいえ、同じ目的に向かって苦難を乗り越え、さらに共同生活をしているとなれば、助けに行かない選択肢は無いのかもしれませんね。

指揮官のハーシュも、最初はクリスがロシアに寝返った可能性を考慮して、救出作戦に難色を示していましたが、彼女を失いたくない気持ちは他のメンバーと同じようで、最終的に手助けをしていたのは良かったです。


サシェンカの意味

今回のエピソード、凄く魅力的だと思ったのは、ピアノの鍵盤の上で重なる2人の手によって、かつてのクリスとインガの関係性が表現されていたシーンです。

彼女たちが特殊工作員のバディでありながら、恋愛関係だったことが分かる、幻想的な演出になっていました。

ただ、インガにとってクリスが組織を抜けた後の3年間は、喪失感を抱えたまま過ごしていたらしく、クリスもそれが気がかりだった様子。

もともと組織を抜け出したかったクリスは、インガの事を想って(インガが逃走に協力したと組織から疑われないように)行動したので、結局お互いを想う気持ちはずっと変わらなかったようです。

誤解が解けて2人は以前のように手を重ねますが、インガは一連のやり取りを見ていた部下から、裏切り者として銃で撃たれてしまいます。

彼女が死ぬ間際、クリスに「私の分まで生きて、サシェンカ」と言っていましたが、このサシェンカは、特別な人にしか使わない愛称とのこと。

©2024 The Cartoon Network, Inc. All Rights Reserved

切ないラストでしたが、彼女たちの間には確かに深い愛があったと分かり、ラストでクリスがエアーでピアノを弾くシーンへと繋がるのは、何とも言えない感情になりました。


最高のチームアクション

クリス救出にあたって、ラザロの見どころでもあるアクションパートが久々に復活しました。

5話のエレベーターファイトから間が空きましたが、爆発寸前の油田での肉弾戦や、銃撃、さらに手を縄で縛られたハンデの状態からの反撃シーンは凄まじかったです。

名作スパイ映画のオマージュが随所に取り入れられている本作のアクションですが、毎回それをも越えんとする気概を感じますし、アニメだからこそ出来るダイナミックな表現方法には脱帽してしまいます。

多くのアニメーターさんが心血を注いだ、現代アニメ最高峰のアクションなのは間違い無いので、「正座をして鑑賞しなければ!」という気持ちになるのは筆者だけでしょうか(笑)。


スキポール空港の事故とリーランド

今回のお話で気になったのは、クリスが1度死ぬ事になったという空港の事故。

おそらくアベルの話にあった、アクセルも関わっているであろう、スキポール空港(オランダ)での事故の事だと推測します。

クリスによれば、1度生体反応が消え、死亡者リストに載った後に息を吹き返したとのことでした。

死亡者リストに載るまでの心停止の時間を考えると、助かる確率はかなり低いと思われますが、ハプナが効かないとされるアクセルが関わっていたり、この事故自体に何かしらの裏がありそうです。

また、前回のアジトの会議の中で、リーランドが2つのスマホを持っていたのが個人的にずっと引っかかっているんですよね。

もし彼がスパイなんて事があれば、足がつかないように誰かと連絡を取っているなんてこともありそうです。

8話まででラザロメンバーの素性は何となく判明してきましたが、リーランドがラザロに招集された理由は未だに見えず、自分でも過去を語ることがないのが気になるところ。

まだまだスキナーに近づく手がかりは見えませんが、1番の近道はラザロメンバーの調査をすることなのかもしれません。


渡辺作品のファン必読の2冊

洗練された唯一無二のアニメーションで、国内外に多くの熱狂的なファンを獲得し続けている渡辺信一郎監督ですが、その半生の振り返りや濃密なインタビューが載ったファン必読の2冊が発売されるということで、気になった方はそちらも是非チェックしてみてください。

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